JACの図書室には、たくさんの古い地形図が眠っています。どういう地図があるのか、全く整理されていないので、目当てのものを探すためには、全てのケースを確認してみなければなりません。これでは全くの宝の持ち腐れで、いつかは処分されてしまうのではという危惧さえ感じられます。・・・・・・少なくとも、地図名と保管場所だけでも判れば・・という事で我々の手でこのほど整理が完了しました (報告:近藤善則)
1、きっかけは
日本山岳会は多くの地図を所有しています。特に海外遠征に必要な地図の所有は他に類を見ない貴重なものも多くあり、その全貌はあまり知られていません。
その中で、旧陸軍参謀本部・陸地測量部によって作成された地図は現在の国土地理院の地形図に引き継がれ、現在日本国土すべてがカバーされていて、我々の登山に欠くことのできない情報を与えてくれます。過去に発行されたものは、霞ヶ関の国土地理院の閲覧室ですべてのものが納められていて、パソコン画像でいつでも閲覧できるようになっています。
そのほか国立国会図書館に収蔵されていますが、いずれも直接赴いて所定の手続きをしなければならず、なかなか億劫なものです。
きっかけは中央分水嶺の地域特定のなかで、現在の地形と過去の地形を見比べる必要があったことです。その地域は北海道の現在千歳空港付近を通過する分水嶺が、ほんとうは何処を通過していたのか、大変興味のあることでした。それには古い地形図を調べる必要があります。
国土地理院に出かけるしかないか・・と考えていたところ、北野代表から「山岳会の図書室に陸軍陸地測量部の製作した地形図があるらしい・・・」と聞き及び、一度拝見してみようということになった。地形図は書庫の入口のスチール製図面ケース5段式のもの5ケース積まれているなかにぎっしり詰っていた。いままで何回か図書室に入ったことがあるが、そのときまで全くこのケースがあることに気がつかなかったことは、たいへん迂闊であった。
何枚ぐらいあるのだろうか。これでは、目当ての地形図を探し出すのは、宝くじを当てるようなものだ。さっそく何枚かめくってみる。ところが数枚めくったところで、なんと目当てのものが偶然見つかったではないか。
明治43年12月10日、陸地測量部発行の千歳(北海道仮製五万分一図・札幌第八号)である。現在の新千歳空港の敷地は樽前山の東麓に広がる広大な傾斜地だったことが伺える。その地形図と現在の地形図を重ね合わせると、分水界は管制塔付近から殆ど東西に走り、滑走路のど真ん中を貫いていることがわかる。
こんな貴重な資料が身近に眠っているとは驚きだ。さらに幾枚かをめくってみたが、これらの地形図が全く整理されておらず、ランダムにケースの引出に収められているだけであった。これではせっかくの貴重な資料も宝の持ち腐れ。いったいどんな種類のものがあるのか、どこの地域のものがあるのか・・・・・
ということで、少なくとも図幅名と保管場所だけでも明確にしようということで、我々が整理しようじゃないかということになった。
当時の総務担当理事(宮崎氏)に整理させてもらいたい旨申し入れる。しばらくして地図類は現在図書管理委員会が管理しているが、同委員会の了解をとりつけたとの連絡を受け具体的な整理方法などを検討することになった。
2、整理作業開始
A1サイズ5棚のスチール製図面ケースは4ケースあり、全部で20の引出がある。高さは背丈以上になる。各引出しにはぎっしりと地図がつめこまれており、相当の重量感だ。まずは一通りケースの中身を確認。殆どが旧陸軍参謀本部陸地測量部の製作した地形図のようだ。中には小さい縮尺の日本全図や、地質調査所製のものもある。 さてどこからどのように進めるか・・・
作業を開始するにあたり、図書管理委員会の松田雄一氏よりこの地図について、幾つかの情報をいただいた
1、過去に児玉氏が整理した経緯がある
2、山岳会への入手経路は 陸軍参謀本部に所属していた日本山岳会の会員である高木菊三郎かその遺族の寄贈ではないかと推測する
3、地質調査所発行のものは現在の産業技術研究所にも所有しているものがなく、数年前に貸出をしたものがある
4、現在の山岳会図書館の隣の部屋を所有して資料室または図書室の拡張計画があり、地図類はそこに保管できるかもしれない
等等
整理作業の方法と手順
1、図のような整理カードに各ケース棚の図面を10枚づつ、必要事項を記入し、仮番号つける
2、縮尺別に一覧表を作成(分類は「本邦地図目録」(1969年国際地図学会)を参考にした
3、10枚づつを区分し縮尺・種類別にマップケースに収める
4、「旧版地図リスト」を作成し図書管理用と山岳地理クラブ用として冊子に製本
整理後の運用
地理クラブとしては、日本山岳会が保管している地図の種類や図幅名がわかることが第一目標であるため、今後の管理・運用方法については図書管理委員会に委任しその方針に従うこととした
なお、整理が終了した旨 会報「山」に掲載したところ 国土地理院より閲覧の申込みがあり、閲覧確認したところ現在国土地理院にも所有していない地図があったことから、日本山岳会より国土地理院に貸出す手筈がとられた。また地図の保管方法について国土地理院から協力の申し出があったことを付記しておく
旧版地図リスト
日本山岳会の公式ホームページの会員サイト(パスワードが必用)にリストがアップされているリストの項目は 地図種類 縮尺 図幅名 よみがな 発行年 区域番号 色数 価格 分類No(地理クラブ独自方式) 棚番号(保管するマップケース) 管理番号 である
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