荻窪の古書店で偶然みつけた「山の地形図」という昭和18年出版の本は、地形図の作成について、たいへん解りやすく解説されており、地図に興味のある方には一読の価値がある内容である。
著者は陸軍中佐 山口正。陸地測量部部員で、実際に測量に携わった人のようだ。
昭和18年はまさに大戦がはじまり日本が快進撃の最中。東半球の殆どが日本の支配下になっていた時期である。そのなかで地図がいかに作戦に重要なものであったか−−−地図がなくては戦ができない−−−と説くことから内容がはじまる。
日本の将来を担う青少年向けに、地図がどのように作成されているかという概念を平易に述べ、地形図の正しい認識を与え、測量に携わる人々の血の滲むような努力の結晶によって出来上がっているか ということを解説したもので、いま我々の平和な時代に読んでみても充分理解できる内容で、読み物としてもたいへん面白い。
三角測量の具体的な方法や作業の逸話、水準測量、地形測量 と豊富な図や写真を基にあたかも建築物を完成させていくようにテンポよく読み進み、いつしか地形図の全てが会得したかのような快感が得られてしまう。
まさに、我々地理クラブにとっても教科書になるような内容であったので、復刻冊子を作成する事にした。当然著作権などの問題も発生する可能性があるので、出版社や著者について可能な限り調べてみたが、判らないため、出版関係の方に問い合わせてみた結果、30年以上経過しているものなので、グループ内で使う目的ならば構わないだろうという解釈を得て作成したものである。
以下に 目次を掲げておく
山の地形図 山口正 著 昭和18年10月10日 初版 宋栄堂 刊(A5版120頁)
目次
(一)大東亜戦争と地図
(二)地形図
(三)天文測量と経緯度
(四)三角測量
1 三角点
2 基線測量
3 選点作業
4 造標作業
5 観測作業
(五)水準測量
(六)地形測量
1 悌尺
2 図根点
3 水平曲線
4 地点の測定法
イ 測斜儀
ロ 交会法
ハ 道線法
ニ 光線法
5 細部測量
イ 地形の現図
ロ 地物の現図
(七)地形図の完成
あとがき
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なお、冊子は限定部数で、現在完配いたしましたが、何人か希望者がいますのでまとまった時点で再製作の予定です。希望者は連絡ください(予定頒価 \2,000-)
近藤 善則