三宝山(一等三角点)と甲武信岳(三河川の源流)を尋ねて
Alpine geographical club (AGC山岳地理クラブ)で地図を片手に、山岳地形の観察、三角点や、水系・分水嶺の確認・などを楽しみながら学んでいる。
ある日の例会で『三冠王』という山の存在を知った。日本中央分水嶺の線上に聳え、一等三角点(基点or本点)を頂上に置き、かつ都道府県境に位置する山が『三冠王』と定義されているのだという。この敬意を示したくなるような山々は、全国で8座を数えるだけだという。見事に厳しい条件をクリアした『三冠王』の山、埼玉県最高峰の三宝山(2488m)が第6回目の探索山行に決定した。十文字峠より三宝山と甲武信岳を2泊3日で歩くというものである。
小春日和の11月2日に新宿より信濃川上へ向かう。ここは天然記念物の「川上犬」をはぐくむ千曲川源流の村である。11名の参加者が集合し、明日の登山の話が弾む。翌3日、5時起床、凛とした空気が身体中をぬけたような気になり、とても気分がいい。毛木平登山口から十文字小屋まではなだらかなのぼりが続く。秋から初冬へと衣替えする山の景色には、何故かいとおしいものが感じられてならない。大山への道は倒木についた緑の苔が鮮やかで、適期の過ぎたシャクナゲのなごりの茶色い実が時折目につく。この一帯がシャクナゲ色に染まる頃、再び訪れてみたいという気持が湧き上がる。いよいよ三宝山へ、というところで懸念していた風も強く吹きだした。風の強さに比例するように気温もぐんぐん下がってくる。それぞれが志向を凝らした防寒対策を講じて,三宝山を目指して進む。PM1時13分、『三冠王』の山と対面する。
三角点は、雪(初雪だろうか?)で化粧し私達を迎えてくれた。樹林に囲まれた広い平地のその頂上は静けさに満ち溢れ、なんともいえぬ威厳が感じられた。甲斐・武蔵・信濃(現在の山梨・埼玉・長野)の三国の境界にあり、一等三角点を頂上に置き、日本中央分水嶺上に堂々と聳える山・・これが『三冠王』の山なのだと。三角点や、高度、方位などをGPSや磁石を使ってそれぞれが調査した。AGCの探索山行で御馴染の行動である。風は益々強くなり身支度を再び整えて三宝山を後にした。凛とした空気のこの季節は展望が極めてよい。
今夜の宿は武信小屋である。小屋の夜はスライドを見たり、ご主人の苦労話などを聞き、隙間風にチョッピリ震えながら、いつのまにか寝入っていたようだ。翌4日、小屋のご主人が「ニリン草の咲く頃もいいよ」と言いながら笑顔で送ってくれた。
今回のもう一つの目的である信濃川の源流に出会うため、目的地に向かう。日本最長の河川は、千曲川から信濃川へと名前を変え、長野県から新潟県を流れ日本海へと注ぐのである。その最初の一滴に出会う。「千曲川、信濃川水源地」である。その一滴の水の音は確実に鼓動していた。たった一滴の粒が大きな河川を作り出すという自然の力強さと神秘がヒシヒシと伝わってきて、水滴の音はしみついて離れなかった。
AM10時35分、毛木平到着。過ぎてしまえばあっという間の2泊3日の探索山行であったが、満足感で心は満たされていた。大きな自然と対峙しながら、一つ一つのテーマを学んで行く充実感が溢れていた。『三冠王』の山、『千曲川の源流』の水滴、今回のテーマから学んだ事、感じた事をステップにし、今後も楽しくAGCの活動を続けていきたいと思う。 寺田美代子
調査記録
1、大山
2、三宝山
Data: |
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観測日: |
2002/11/3 |
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山地名: |
三宝山(さんぽうざん) |
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点名: |
国師岳2 |
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等級: |
一等本点 |
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GPS位置: |
N35°55′3.7″
E138°43′40.3″ |
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標高: |
2483.3m |
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標石の方位: |
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標石の寸法: |
18cm×18cm |
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保存状態: |
良好 |
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該当地形図: |
金峰山(甲府5-2) |
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備考: |
点の記 |
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3、甲武信岳
Data: |
. |
観測日: |
2002/11/3 |
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山地名: |
甲武信岳(こぶしだけ) |
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点名: |
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等級: |
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GPS位置: |
N35°54′21.7″
E138°43′54.7″ |
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標高: |
2475m |
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標石の方位: |
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標石の寸法: |
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保存状態: |
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該当地形図: |
金峰山(甲府5-2) |
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備考: |
千曲川(信濃川)、荒川、笛吹川(富士川)の源頭 |
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4、笛吹川源流地点
5、千曲川源流地点
行程記録:
11/2 川上村梓山白木屋集合宿泊
11/3 =毛木平(:0)…十文字峠(:)…大山(:)…尻岩(:)…三宝山(:)…甲武信岳(:)…甲武信小屋(:)…笛吹川源流往復 (泊)
11/4 甲武信小屋(:)…甲武信岳(:)…分岐…千曲川源流(:)…毛木平(:0)=信濃川上駅
参加者:北野忠彦、平野彰、川村トシ子、半田明稔、半田由美子、鶴田実、高田容子、高橋素子、寺田正夫、寺田美代子、近藤善則(11名)